テクノロジーがもたらす光と影(後編)
更新日 : 2025年10月17日

誰もがアクセスできるようになったデジタル技術。教育の現場でも活用が急速に進んでいますが、その導入は本当に学習者にとって最善なのでしょうか?
昨日ご紹介させていただきました、Global education monitoring report, 2023 (UNESCO) *1は、「教育におけるテクノロジーは、誰のためのツールなのか」という鋭い問いを投げかけています。
テクノロジーがもたらす光と影
レポートは、デジタル技術が学習機会の拡充、特に不利な立場にある学習者への到達や、知識を身近な形で提供する点で大きな可能性を秘めていることを認めています。遠隔学習や、演習機会の増加による学習の個別化は、教育の質の改善に貢献する側面があります。また、教育管理におけるデータの活用は、学校運営の効率化を促す力も持っています。
しかしその一方で、テクノロジーの導入は、必ずしもすべての人に恩恵をもたらすわけではないという影の部分を明確に指摘しています。もし不適切に使用されれば、学習者を排除したり、その負担になるだけでなく、直接的に有害になる可能性すらある、と警鐘を鳴らしています。
「誰のためのツールか」という問い
レポートのサブタイトルにもあるように、この問題の核心は「テクノロジーが誰の条件(terms)で使われているのか」という点にあります。最も深刻なのは、最も不利な立場に置かれた人々が、しばしばこれらのデジタル技術から恩恵を受ける機会を与えられていないという公平性の問題です。
さらに、デジタル技術の利用に伴う短期的および長期的コストが、著しく過小評価されているという指摘も見逃せません。機材導入だけでなく、維持費、セキュリティ、教師の研修など、見えないコストが教育予算を圧迫し、結果として他の重要な教育資源が削減される事態を招きかねません。
教育の質を高めるための「4つの必須条件」
エビデンスに基づいた導入の必要性
レポートが強く推奨しているのは、テクノロジーの導入は「証拠(エビデンス)」に基づいて行われるべき、という原則です。具体的には、以下の4つの必須条件を満たしているかを検証するよう、各国政府に求めています。
- 適切であるか(Appropriate):そのテクノロジーが学習目標や発達段階に合っているか。
- 公平であるか(Equitable):すべての子どもが公平にアクセスでき、恩恵を受けられるか。
- 拡張可能か(Scalable):一時的な実験で終わらず、広範囲に展開できるか。
- 持続可能か(Sustainable):長期的なコストや環境負荷を考慮して続けられるか。
つまり、ただ「最新だから」という理由で導入するのではなく、「生徒の最善の利益にかなう」という視点から、その教育効果を厳しく検証する必要がある、ということです。
見過ごされがちな「教師の準備」と「負の影響」
テクノロジーの導入において、教師が新しいツールを効果的に活用するための適切なトレーニングが提供されていない場合が多いという点も、レポートで強調されています。どんなに優れたツールでも、それを使いこなす教師の専門知識とスキルがなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
また、政府は、学習者をサイバーいじめや誤情報といったデジタル技術の負の側面から保護するための規制を確実に講じる必要があると訴えています。
受験生が意識すべき「対面指導」と「スキルの本質」
テクノロジーと教師の関係
レポートは、テクノロジーの活用が成功するための鍵は、教師との対面でのやり取りを「補完」する形で使われるべきだと結論づけています。デジタルツールが、教師の指導を「代替」するものであってはならない、という強いメッセージです。
大学受験を目指す受験生にとっても、映像授業やアプリ学習が、個別指導や教師との対話を通じて得られる深い理解や思考の過程を置き換えるものではない、という原則は極めて重要です。
デジタル時代における「基礎スキル」の定義
レポートは、デジタルスキル自体が、もはや基本的なスキルセットの一部になっていることも示しています。しかし、このスキルは、単に機器を操作できることではなく、情報を選別し、批判的に活用する「デジタル・リテラシー」を意味します。これからの大学受験で求められる論理的思考力と情報処理能力は、この新しいスキルを基盤として構築されるでしょう。
総括
ユネスコのによるレポートは、教育におけるテクノロジーの導入は、「証拠(エビデンス)に基づいた冷静な判断」が必要であり、「生徒の最善の利益」を優先すべきだと示唆しています。
デジタルとアナログを使い分ける戦略的学習
確かに、映像授業やオンライン教材といったデジタル技術は、知識のインプットや効率的な反復練習においておすすめの非常に強力なツールです。
しかし、思考力や表現力を鍛えるためには、紙の参考書を使った精読や、手を動かして問題を解き、ノートに要約するといった学習が不可欠です。デジタル技術のメリットを理解しつつ、目的と効果に基づいて使い分ける戦略的な姿勢が、大学受験準備の成否を分けるでしょう。
*1 Global education monitoring report, 2023 (全文、日本語版は概略)
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