緊張しない脳をつくる。受験に勝つ「自己認知力」とメンタルの整え方
更新日 : 2025年11月14日
「模試で緊張して頭が真っ白になった」「失敗体験ばかりが積み重なって、自信がなくなってきた」——そんな悩みを抱える受験生は少なくありません。
実は、こうした状態は「メンタルの弱さ」ではなく、脳の使い方に原因があります。
本記事では、YouTube動画「緊張しない&しなやかメンタルを作る”脳の訓練”をベテランドクターが伝授」(動画はこちら)をもとに、脳科学的に自分を整える方法=自己認知力(セルフアウェアネス)の高め方を解説します。
本番に強くなる鍵は「自己認知力」

動画に登場するのは、スポーツドクター・辻秀一先生。医師としての知見に加え、オリンピック選手や企業経営者へのメンタルトレーニングを行うエキスパートです。
辻先生は、「人間の脳は放っておくと、外側の出来事にばかり意識が向く仕組みになっている」と語ります。
たとえば:
- 過去のミスを思い出して落ち込む
- 未来の結果(合格・不合格)を想像して不安になる
- 周囲の目や評価が気になる
これらはすべて「認知脳」が暴走している状態。逆に、「今、自分が何を感じているのか」「自分は今どんな状態か」を意識できている状態が『非認知脳』=自己認知力です。
脳は訓練すれば変わる——”可塑性”という性質
脳には「可塑性(plasticity)」という性質があります。これは、訓練によって神経回路が強化・再構築され、思考や感情のパターンを変えられるというものです。
つまり、「不安になりやすい脳」も、「緊張に強い脳」へと進化させることができるのです。
ご機嫌な脳をつくる3つのトレーニング
辻先生が提唱するメンタル強化トレーニングは、非常にシンプルかつ脳科学的根拠に基づいています:
- 感情に気づく(ラベリング)
- ご機嫌の価値を認識する(価値の言語化)
- 「今・ここ・自分」に集中する(マインドフルネス的再認知)
1. 感情に気づく
「今、自分は不安だ」と言葉にするだけで、扁桃体(不安・恐怖を司る脳部位)の過剰な活動が抑制されることが、心理学実験でも示されています。
これをエモーショナル・ラベリング(感情の名付け)といい、ネガティブな感情を「気づく→言語化する」ことで、脳内で客観的に処理できるようになるのです。
2. ご機嫌の価値を認識する
機嫌が良いと、脳内にドーパミンが分泌され、記憶力・集中力・判断力が高まります。つまり、「ご機嫌でいること」は勉強効率を最大化する戦略的状態です。
しかし、私たちは「不機嫌になる理由」はよく考える一方で、「ご機嫌でいる価値」は考える習慣がありません。
辻先生は、次のようなリストを毎週書き出すことを勧めています:
- ご機嫌でいると勉強がはかどる
- 家族や友人に優しくできる
- 新しいアイデアが浮かぶ
- 試験中に焦らず判断できる
これを「自己報酬システムの再学習」と呼び、脳にとって本当に価値ある状態を再定義するトレーニングです。
3. 「今・ここ・自分」に集中する
脳は本来、「未来」や「過去」へと意識がさまよいがちです(これを「タイムワンダリング」と呼びます)。
そこで有効なのが、「今・ここ・自分」と唱えて意識をリセットするマインドフルネス的習慣です。
「今ってなんだろう?」「今、自分は何をしている?」と問いかけることで、脳の焦点を“現在”に戻すことができ、緊張や不安のループを断ち切ることができます。
まとめ:脳の仕組みを知れば、緊張は攻略できる
受験勉強において、知識や努力と同じくらい重要なのが「脳と心の状態」です。
・感情を言語化すること(=セルフモニタリング) ・ご機嫌でいる価値を再認識すること(=モチベーション設計) ・今・ここ・自分に意識を戻すこと(=メンタル再起動)
これらはすべて、脳の可塑性と自己認知力を活かす科学的な方法です。
今、自分の感情に気づき、ご機嫌の価値を思い出し、「今・ここ・自分」と静かに唱えてみてください。その一瞬から、メンタルの質は確実に変わります。
▼参考動画
緊張しない&しなやかメンタルを作る”脳の訓練”をベテランドクターが伝授
▼辻秀一先生について
スポーツドクター・辻秀一先生は、医学博士としての知識に加え、JOC(日本オリンピック委員会)強化スタッフ経験を持つメンタルトレーニングの第一人者。アスリートだけでなく企業・教育機関にも多数指導実績がある「脳と心の専門家」です。