受験期、特に最終盤においては、友人やライバルの進捗が耳に入ると、心がざわつくことがあるかもしれません。他者の成功を目の当たりにしたとき、自分の持ち分が減ったかのように感じてしまう現象は、競争環境下では起こりやすいものです。

しかし、ここでゲーム理論における非ゼロサムゲームという視点を取り入れてみましょう。ゼロサムゲームとは、一方の利益が必ず他方の損失となるゲームですが、受験勉強の大部分はこれに当てまりません。誰か一人が志望校に合格したからといって、皆さんの合格の可能性が自動的にゼロになるわけではないのです。

皆さんが取り組んでいる学習は、誰かとの奪い合いではなく、むしろ自己の能力値を絶対的に高める行為です。他者の進捗を気にすることに費やす認知資源は、皆さんが自身の知識を深め、定着させるために使うべき貴重な資源であると考えることができます。皆さんの競争優位性は、他者の状況によって変動する相対的なものではなく、これまで費やした時間と、それによって獲得したスキルという絶対的な蓄積の上に築かれています。

周囲の成功は、皆さんの努力を否定するものではなく、ただ「その人も頑張っている」という事実を示すに過ぎません。皆さんの戦略は、他者との比較ではなく、自己の目標達成に向けた最適なルートを見極め、ひたむきに実行することに尽きるのではないでしょうか。この確かな自己戦略の実行こそが、自己肯定感を支える基盤となります。