この時期、お子さんの些細な態度や言葉に、いつもよりもイライラや不機嫌さが現れることが増えているかもしれません。

「どうしてそんな言い方をするの」「そんな態度では集中できるわけがない」。そう思ってしまうのは、無理もありません。親御さん自身も、お子さんの将来への不安を抱え疲れが溜まっているからです。

しかし、お子さんの不機嫌さは、必ずしも「わがまま」や「やる気がないこと」を意味しているわけではないと、私は思っています。むしろ、その不機嫌というサインの裏側には、いくつかの複雑な原因が隠されていることが多いのです。

成績が伸び悩むことへの焦りだけでなく、蓄積された疲労や睡眠不足、あるいは、漠然とした将来への不安など、いくつかの感情が絡み合って、それが「不機嫌」という形で表面に出てきている。言葉でうまく表現できない、助けを求めているサインだと捉えることもできるかもしれません。

そんな時、親御さんが「どうしてイライラしているの」と、言葉で問い詰めたり、感情的に叱ったりするのは、最善の策ではないことが多いです。言葉によるやり取りはお互いの感情をさらに高ぶらせてしまい、家庭内の空気全体を重くしてしまうからです。

私自身がもしその場にいたら、あえて言葉でのコミュニケーションを一度止めることを提案します。口頭でのアドバイスや注意ではなく、行動という非言語的なメッセージで、サポートを伝えてみるのです。

温かい飲み物を何も言わずに机の上に置いてあげる。お子さんの好きな食材を使った、消化に良い温かい食事を出してあげる。あるいは、部屋の温度や湿度をそっと調整してあげる。そうした、あなたの存在と愛情を非言語で伝える行為こそが、張り詰めたお子さんの心を、最も穏やかに解きほぐしてくれるのだと、私は強く思います。

不機嫌な態度の奥にある、本気の焦りと戦っている我が子の気持ちを慮る。その冷静さこそが、この時期の親御さんに求められる力だと考えています。