【とある日のmonologue #22】
更新日 : 2025年11月10日
生徒の皆さんには、今、一生懸命に取り組んでいる勉強のことだけではなく、心が疲れた時、ふと立ち止まって、自分をリセットできるような「好きなもの」を大切にしてほしいと思っています。私自身にも、そういう存在があります。今日は、私が高校時代に夢中になっていた、ある映画の話をさせてください。
その映画は、『ヘアスプレー』です。もうご覧になった方もいるかもしれません。舞台は1960年代のアメリカ。ぽっちゃり体型だけれど、歌とダンスが大好きで、とにかく明るい女の子が、差別に立ち向かいながら夢を叶えていく、という物語です。簡単に言えば、ただ元気な女の子が歌って踊る、それだけの映画です。
物語の深さや、社会的メッセージはもちろんありますが、私が本当に好きだったのは、その理屈抜きのエネルギーでした。何かに悩んでいる時、この映画を今はなきVHSデッキに入れ、流れる音楽に身を任せてみる。彼女たちの悩みなんて、一瞬で吹き飛んでしまうような、底抜けの明るさがあります。観ているうちに、なんだか自分の中に溜まっていた、どうしようもないモヤモヤも、一緒に弾けて消えていくような気がするんです。
受験生の頃は特に、自分のやっていることに「意味」や「結果」を求めがちになります。この勉強は点数に繋がるのか、この努力は将来役に立つのか。そう考えるのは当然のことです。でも、人生には、何の役にも立たなくてもいい、ただ「好きだから」という理由だけで、自分のエネルギーを補給してくれる時間が必要なのだと、この映画を観るたびに思い出すんです。
ただ明るい音楽に乗せて、登場人物たちが悩みながらも前を向いていく姿。それは今でも私にとって、とても大切な栄養剤です。誰かに何かを言われるのではなく、自分自身の心から、笑ったり、感動したりできる時間。そのエネルギーが、きっと次の日の机に向かう力になってくれるはずです。
皆さんの「ただ好き」なものは何でしょうか。そんなものが、一つでも多く、皆さんの日常の中にあることを願っています。