秋の行楽シーズン真っ只中です。この週末も、街は賑わいを見せていることと思います。一方で、受験生のいるご家庭では、「どこかへ出かけるのは気が引けるけれど、一日中家で勉強させているのも気が滅入るだろうか」と、休日の過ごし方に悩む保護者の方も少なくないのではないでしょうか。

家族で旅行やレジャーに行くのは、心身のリフレッシュに繋がる大切な時間です。しかし、受験本番が迫るこの時期になると、その「リフレッシュ」がお子さんにとってかえってプレッシャーや負担になってしまうこともあります。無理に気分転換をさせようとして、集中力を乱してしまうのは本意ではないはずです。

私自身、多くの生徒と接していて思うのは、この時期彼らが一番求めているのは、特別なイベントではなく、「乱されない、穏やかな時間」ではないか、ということです。それはつまり、家庭内での「静けさ」です。

例えば、日曜日。「今日は一日、自分の好きなように勉強していいよ」と声をかけるだけでなく、家族で生活音を少しだけ抑えてみる。テレビの音量を少し下げる、大きな物音を立てない、など、お子さんの集中を妨げないように、ご家族全体で意識してあげる。そうした配慮は、言葉以上に、お子さんを安心させる力を持っています。

そして、夕食の時だけは、勉強から離れる時間を作る。献立を考える時、「今日は子どもの好きなメニューにしよう」と、少しだけ手間をかけてみる。その温かい食事の時間が、「自分は家族に大切にされている」と感じられる、最大の安心材料になります。

あくまで教育という現場から客観的に見ている私個人の考えですが、この時期の休日の「最適解」とは、お子さんの意思を尊重し、家庭という「安全基地」の穏やかさを徹底的に守り抜くことだと強く感じます。特別なことをしなくても、家族が近くにいるという温かさがあれば、それだけで十分なのだと思います。

将来、自分が親になった時、子どもの大切な時に、焦りや不安ではなく、この「静かな温かさ」を提供できる人間でありたい。そのために、日頃から自分の心持ちを整え、周りの大切な人の心を慮ることを、忘れずにいたいと思っています。