【とある日のmonologue #18】
更新日 : 2025年10月23日
私が生徒と面談(コーチング)をする時、一番大切にしていることは何ですか、と聞かれたら、おそらく「聞くこと」と答えます。何かを教えることでも、アドバイスをすることでもなく、ただ、聞くこと。それは少し不思議に思われるかもしれません。
なぜなら、勉強のやり方にしろ、進路の選択にしろ、その生徒にとっての本当の答えは私の言葉の中ではなく、生徒自身の心の中にしかないと信じているからです。私の役割は、答えを教えることではなく、丁寧な対話を通して、生徒が自分自身の力で自分の中にある答えを見つけ出すのを、手伝うことだと思っています。
そして、私がここまで頑なに「聞く」という行為にこだわるのには、もう一つ、個人的な、そして悲しい理由があります。
詳しいことはあまりにも悲しくなってしまうので省きますが、私は過去に自分にとって本当に大切な人が発していた日常でのささやかな言葉や忠告、そして言葉にならない心の声を聞き取ることができず、その結果、永遠に失ってしまったという経験をしました。あの時、もっとちゃんと話を聞いていれば。いや、話すことができなくても、その気持ちを汲み取ろうと、もっと必死になっていれば。その後悔は、今でも私の胸にずっしりと重くのしかかっています。
だからなのかもしれません。私が生徒の話を聞く時ただその言葉を追うだけでなく、その奥にある、まだ言葉になっていない感情や、本人も気づいていないかもしれない本音まで、なんとかして聞き取りたい、と感じるのは。もう二度とあんな後悔はしたくない。その一心で、私は今日も生徒の前に座り、耳を澄まします。
答えは、相手の中にしかない。私はそれを引き出す手伝いができるだけ。その謙虚な姿勢と聞くことの本当の大切さを教えてくれた、今はもう会えない大切な存在への感謝を、これからもずっと忘れないでいようと思います。