なぜ、隣の席のA君が気になるのか。「執着」と「他人比較」の苦しみから人は離れることができるのか
更新日 : 2025年9月10日
今日は、勉強法やテクニックの話から少し離れて、受験生の誰もが一度は経験する、”心”の問題について話してみようと思います。
塾の自習室や、学校の図書館。シーンと静まり返った空間で、必死に目の前の問題集と向き合っている。…はずなのに、なぜか、隣の席のA君のことが、気になって仕方がない。
「すごい勢いでページをめくってるな…もう、そんなに進んでるのか」
「使ってる参考書、自分よりレベルが高そう…」
「さっきから一度も休憩しないで、集中力が切れないなんて、すごいな…」
そう思った瞬間、目の前の参考書の文字が、急に頭に入ってこなくなる。焦りと、劣等感と、嫉妬が入り混じった、黒くて重たい感情が、心を支配していく。…こんな経験、ありませんか?
A君はあくまでも例えです。勉強だけでなく、スポーツができるあの子、自分より可愛いかっこいいあの人、いつも明るくて人気者な人たち、、、
僕も、もちろんありました。この「他人との比較」という感情は、受験生にとって、もしかしたら一番手強い敵かもしれません。今日は、この苦しみの正体と、そこから少しだけ自由になるためのヒントを、最近ハマっている仏教の教えも参考にしながら、僕なりに考えてみたいと思います。
僕たちが苦しむ正体、それは「執着」という心のクセ
僕は、お坊さんではないので、あくまで僕なりの解釈ですが、仏教では、人間の苦しみの多くは「執着(しゅうちゃく)」から生まれる、と説かれています。「執着」とは、何かに強く心を囚われて、そこから離れられなくなってしまう状態のことです。
じゃあ、僕たち受験生は、何に執着しているんでしょうか。それは、「他人より優れている自分」という”状態”への執着だと思うんです。「模試の判定」や「クラスの順位」、「偏差値」といった、他人との比較によってしか測れない価値観に、僕たちの心は、がんじがらめに囚われてしまっています。
隣の席のA君が気になるのは、A君自身が憎いわけじゃない。A君の存在によって、「他人より劣っているかもしれない自分」という、一番見たくない現実を、見せつけられてしまうからです。その苦しみから、僕たちは逃れたいんですよね。
「他人軸」から「自分軸」へ。評価のモノサシを、変えてみよう
この苦しみから抜け出すための、たった一つの、でも最も効果的な方法。それは、評価のモノサシを、「他人軸」から「自分軸」へと、意識的に持ち替えることです。
「他人軸」で生きていると、自分の価値や気分が、すべて他人の動向によって決まってしまいます。A君の調子が良ければ、自分の気分は落ち込む。模試の順位が一つ下がれば、一日中、自己嫌悪。他人はコントロールできないから、これはすごく不安定で、苦しい生き方です。
一方で、「自分軸」のモノサシは、たった一つ。「昨日の自分よりも、今日の自分は、少しでも成長できたか?」。これだけです。
昨日まで解けなかった数学の問題が、今日、一つ解けるようになった。
昨日まで知らなかった英単語を、今日、五つ覚えた。
この、自分だけの成長に目を向けた瞬間、不思議なことに、隣のA君の存在が、全く気にならなくなります。むしろ、「A君も頑張ってるな。よし、僕も、僕自身の課題に集中しよう」と、前向きなエネルギーに変えることすらできる。世界の見え方が、ガラッと変わるんです。
だってこの世界は君が主人公だし、君は君自身が幸せになることがゴールじゃないですか?
「お金持ちになる」「いい点数をとる」「親に褒められる」から幸せなんじゃないと思います。あなたがあなたとして朝目覚めた瞬間から、あなたの幸せは始まっているんだと思います。
心を軽くする、今日からできる”小さな修行”
もちろん、言うのは簡単ですよね。他人との比較は、人間の本能みたいなもの。すぐに変えるのは難しいです。だから、心を「自分軸」に戻すための、”小さな修行”を、日常に取り入れてみるのはどうでしょう。
- ”今日の成長”日記をつける:
一日の終わりに、勉強時間や進んだページ数ではなく、「今日、できるようになったこと」を3つだけ、書き出してみる。「三角関数の合成を、人に説明できるようになった」とか、そんな小さなことでいいんです。これを続けると、脳が「自分の成長」に焦点を合わせる練習になります。 - SNSの勉強アカウントを、一時的にミュートする:
「#勉強垢」などで、他の人の完璧なノートや、驚異的な勉強時間を見ると、どうしても比べてしまいますよね。それがモチベーションになるなら良いですが、もし苦しいなら、一時的にミュートしたっていいんです。君の心の平穏を守ることが、最優先です。 - 「おかげさまで」と、心の中で唱えてみる:
これは、僕がやっていた、ちょっとしたおまじないです。A君に対して嫉妬心が湧いてきたら、「A君が頑張ってくれてる”おかげさまで”、僕もサボらずに頑張ろうと思える。ありがとう」と、心の中で感謝してみるんです。不思議と、心がスッと楽になります。 - 苦しくなったらほっと一息
他人を羨んでしまうのは誰しもあることです。けどそんな時こそゆっくり深呼吸して、自分の四肢が動いてる、息ができる、美味しいもの食べれる、そうした小さな喜びに目を向けてみましょう。大丈夫。あなたならきっとできるはずです。
受験勉強の本当のゴールは、ただ大学に合格することだけじゃない、と僕は思っています。この苦しい期間を通じて、自分の弱い心と向き合い、それを乗りこなす術を学ぶ。それもまた、すごく大きな”合格”の一つです。
君の道は、君だけのものです。隣の誰かの道を、羨む必要は全くありません。君が、君自身のペースで、昨日よりも確かな一歩を踏み出せているのなら、それはもう、100点満点です。