【とある日のmonologue #32】
更新日 : 2025年12月25日
クリスマスという日を迎え、指導の合間に窓外の街の様子を眺めていると、この行事が文化によっていかに異なる意味を持つのか、改めて深く考えさせられます。日本と海外、特に欧米諸国におけるクリスマスの過ごし方の違いは、単なる習慣の違いではなく、その社会の価値観が時間の使い方にどう反映されているかを示す、興味深い事例であると感じます。
欧米の多くの地域において、クリスマスは「家族の祝祭」、そしてキリスト降誕を祝う宗教的なホーリーデイとしての地位を占めています。12月25日は企業活動や交通機関が停止し、人々は遠方からでも故郷へ帰り、親戚を含めた家族全員が集結します。食卓には、ローストターキーやハムといった伝統的な料理が並び、その集いの場で互いの愛情を示すプレゼント交換が行われます。この日は、日本におけるお正月やお盆のように、社会全体が内向きの、静謐な時間へと移行するのです。
私がアメリカでクリスマスを友人と過ごした時、厳かな雰囲気の中讃美歌を歌い祝福したのはとても印象的でした。またイギリスで過ごした時はどこもお店も交通機関も動いておらず何も観光を楽しめませんでした。しかしその前後ではクリスマスマーケットなど楽しいイベントはたくさんありましたので訪れる際には確認することをお勧めします。
対照的に、日本におけるクリスマスは、その宗教的文脈をほとんど持たず、商業イベントとしての性格が極めて強いのが特徴です。特に12月24日のクリスマスイブは、「恋人と過ごすロマンチックな日」という特別なイベントとして強く認識されています。また、欧米のようなターキーではなく、フライドチキンや生クリームのデコレーションケーキが定番となっている点は、文化のローカライズの興味深い結果であると言えるでしょう。
日本においては、25日が平日であれば多くの人が通常通り勤務し、クリスマスの装飾はすぐさま片付けられ、瞬時にお正月ムードへと切り替わります。この切り替えのスピードは、日本社会がいかに「イベント」と「日常」を厳密に区別しているかを示唆しているのではないでしょうか。一方、欧米の家族が一堂に会する時間には、普段の日常では語られない深い対話と心の整理が生まれると推察できます。
受験生の皆さんと、それを支えるご家族にとって、このクリスマスという日の過ごし方を観察することは、「自分の人生において、本当に時間を割くべき価値はどこにあるのか」を考える良い機会になるのではないでしょうか。イベントの熱狂ではなく、ご家族や自己の内面に向き合う時間を大切にしたいと願うばかりです。