【とある日のmonologue #21】
更新日 : 2025年11月4日
― 毎日の時間を少しだけ豊かにするもの ―
朝の光がまだ弱い時間、あるいは夜の静けさの中で仕事をしている時。私はいつも温かい飲み物をそばに置きます。そして、その飲み物を入れるマグカップは決まって同じものです。数年前に旅先で出会った、少しだけ厚みのある素朴な陶器のマグカップ。
もちろんコンビニでもらった紙コップでも、特に問題なく飲み物は飲めます。でも私はあえてその「ちょっと良い」マグカップを使いたいのです。ただただちょっといそいそと用意してマグカップにコーヒーや紅茶を一手間加えて淹れてみる。なんだか集中して作業を続ける上での、小さな支えになってくれているような気がするからです。
受験生の皆さんは、今ほとんどの時間を「誰かからの評価」や「目標達成」という、外側に向かうエネルギーに費やしていることと思います。もちろん、それは非常に大切なことですが、そのエネルギーを使い続けるためには、自分自身でエネルギーを補給する時間が必要です。
マグカップの話は、その補給の象徴のようなものかもしれません。朝、温かい飲み物を一口飲んで、「ああ、美味しいな」と心からほっとできる瞬間。それは誰のためでもない、自分自身を大切にするためのほんの数秒間です。頑張る自分を、自分で少しだけいたわってあげる時間。
私にとってのマグカップのように、皆さんにも、そんな「お気に入り」があるといいな、と思います。お気に入りのペン。肌触りの良いひざ掛け。あるいは好きな香りのハンドクリーム。勉強とは全く関係のない日常のささやかな「好き」や「心地よさ」。
そういったものを、日々の生活の中に、意図的に置いておく。そうすることで、張り詰めていた心が、ふっと緩む瞬間が生まれます。その小さなリセットが、長い道のりを、着実に歩き続けるための活力になるのだと私は強く思うのです。