食卓での会話が点数だけの話になっていませんか
更新日 : 2025年10月25日
塾で生徒たちと話していると、本当に驚くほど、みんなよく笑います。休み時間に学校の先生の面白い話をしてくれたり、好きなアーティストの新曲について熱く語ってくれたり。その表情は、受験生というよりも、ごく普通の年相応の少年少女の顔です。
でも、その笑顔をご家庭ではどれくらい見せているのだろうか。そんなことをふと考える時があります。お子さんの将来を思うからこそ、どうしても会話の中心が勉強のこと、成績のこと、進路のことになってしまう。それは、保護者として当然の愛情深い関心だと思います。
ただ、その結果として家庭という場所がお子さんにとって「勉強の進捗を確認される場所」になってしまうと、少しだけ寂しいな、と感じるのです。私自身はまだ子育てを経験したことがありませんが、多くのご家庭の様子を拝見したり、自分自身の学生時代を振り返ったりする中で、強く思うことがあります。
それは、受験期にある家庭の一番大切な役割は、お子さんが「ただの子ども」に戻れる時間と空間を、意識的に作ってあげることではないか、ということです。一日に一度でもいい。「今日の勉強、進んだ?」と聞く前に、「そういえば、あの好きなアニメの続きどうなったの?」と、勉強とは全く関係のない話題を、そっと振ってみる。その話題を話している時のお子さんの顔を少しだけ見ていてほしいのです。
その笑顔を見ること、それ自体がお子さんの心の健康状態を確かめる何よりのバロメーターになります。そして、「お父さんお母さんは、点数をとる自分だけでなくありのままの自分を見てくれている」という安心感が、結果的に受験という長い戦いを乗り越えるための、一番の土台になるのだと私は信じています。
もちろん、勉強の成果も大切です。でも、その大前提として、お子さんが心から笑えているかどうか。その視点を、何よりも大切にしたい。将来、自分が親になった時、どんなに忙しくても、それだけは忘れないでいようと、生徒たちの屈託のない笑顔を見るたびに、強く思うのです。