【とある日のmonologue #16】
更新日 : 2025年10月10日
窓を開けても、あれほど賑やかだった虫の声が少しだけ遠くに聞こえるようになりました。空気がすうっと入れ替わって、昼間の温かさが嘘のように、夜は静かでひんやりとした空気を運んできます。こういう季節の変わり目の夜は、どうしてだか少しだけ感傷的な気持ちになったり、あるいは、いつもより深く物思いにふけりたくなったりするものです。
そんな秋の夜長に、私はよく音楽を聴きます。何か特別なことをするためではなく、ただ、流れていく時間に耳を澄ませるような感覚で。積まれたままの本を片手に、あるいは温かいお茶を一口すすりながら、ただ音の中に身を委ねる時間が、私にとってはとても大切だったりします。
最近、この季節になると決まって手が伸びてしまうのが、KIRINJI(キリンジ)というアーティストのアルバムです。特に『3』というアルバムに入っている「エイリアンズ」という曲は、もう何百回聴いたか分かりません。都会の夜景が目に浮かぶような、少しだけ気怠くて、でもどうしようもなく美しいメロディと、どこか哲学的な響きを持つ歌詞が、静かになった夜の空気と不思議なくらいに溶け合うのです。
音楽というのは面白いもので、ただの音の連なりのはずなのに、私たちの心の中にある言葉にならない感情を、そっと掬い上げてくれることがあります。頭の中が考え事でいっぱいになってしまった時、焦りや不安で心がざわついてしまう時、一本の映画を観るほどの時間も元気もないけれど、一曲の音楽を聴く時間なら、なんとか作れるかもしれない。そしてその数分間が、絡まった思考の糸を、ほんの少しだけ解きほぐしてくれるきっかけになることがあると思うのです。
それはまるで、思考の伴走者のようです。音楽が何か答えをくれるわけではありません。けれど、答えを探して歩き続ける私のすぐ隣で、同じペースで歩いてくれるような、そんな心強さを与えてくれる存在。私にとっての秋の夜の音楽は、まさにそんな役割を担ってくれているのかもしれません。
もちろん、時には軽快なポップスで心を弾ませたい夜もありますし、クラシックのピアノソナタにじっと耳を傾けたい夜もあります。その日の心の天気によって、聴きたい音楽は移ろっていくのでしょう。
皆さんは、どんな音楽と共にこの秋の夜を過ごしていますか。
もしよろしければ、あなたの心に寄り添う、とっておきの一曲を教えてもらえると嬉しいです。音楽と共に、穏やかで思索的な時間が流れていきますように。