【Day2】まずは己を知ることから。志望校合格から逆算するための「現在地」の正しい把握方法
更新日 : 2025年8月3日
昨日の【Day1】では、「”計画なき努力”は、貴重な夏休みを無駄にしてしまう」というお話をしました。そして、この7日間であなただけの「最強の学習計画」を一緒に完成させることをお約束しました。
さて、今日からはいよいよ実践編です。あらゆる計画の第一歩、そして、その計画の精度を決定づける最も重要なステップ。それは、自分の「現在地」を、徹底的に、客観的に把握することです。
カーナビに行き先(志望校)を入力しても、GPSで現在地が特定できなければ、最適なルートを計算できないのと同じです。「自分はなんとなく英語が苦手」「数学はまあまあかな」といった、曖昧な自己認識では、効果的な計画は立てられません。
今日は、思い込みや感覚を一切排除し、データに基づいて「今の自分」を正確に知るための具体的な方法をお伝えします。少し骨の折れる作業ですが、ここを乗り越えれば、あなたの夏休みの学習効率は劇的に向上します。
なぜ「正確な現状分析」が合否を分けるのか?
なぜ、ここまで「現状分析」の重要性を強調するのか。それは、診断が間違っていれば、処方箋も必ず間違ってしまうからです。
例えば、「自分は英語が苦手だ」と思っている生徒がいたとします。彼はその漠然とした不安から、夏休みの間、ひたすら英単語帳の暗記に時間を費やしました。しかし、模試を受けても成績は上がりません。なぜなら、彼の本当の弱点は「単語力」ではなく、「一文を正確に訳すための英文法の知識」にあったからです。これでは、努力の方向がズレており、貴重な時間が無駄になってしまいます。
逆に、「数学は得意だ」と安心している生徒も危険です。模試の結果をよくよく分析してみると、特定の分野、例えば「確率」の分野だけ、正答率が極端に低いかもしれません。そのたった一つの穴が、本番で合否を分けることになるのです。
正確な現状分析とは、あなたの努力を、本当に必要な一点に集中させるための、いわば”精密検査”なのです。
計画の精度を上げる「自己分析3ステップ」
では、具体的にどうやって自己分析を進めていくのか。以下の3つのステップに従って、あなたの現状を「見える化」していきましょう。ノートや紙を一枚用意してください。
ステップ①:全成績データを”一枚のシート”にマッピングする
まず、手元にある最新の模試の成績表と、学校の定期テストの結果(1学期期末など)を用意します。そして、以下のような簡単な表を作成し、科目ごとの情報をすべて書き込んでみましょう。
| 科目 | 模試偏差値 | 定期テスト得点 | 自己評価(◎/〇/△/✕) |
|---|---|---|---|
| 英語 | 52.5 | 65点 | △ |
| 数学 | 61.0 | 88点 | 〇 |
| 国語 | 48.0 | 55点 | ✕ |
この作業のポイントは、データを一覧にすることで生まれる「比較」の視点です。「定期テストは取れるのに、模試になると偏差値が低い」なら、基礎知識はあるが応用力・実践力が足りない、という仮説が立てられます。
ステップ②:科目ごとに”単元レベル”で強み・弱みを言語化する
次に、科目ごとに、よりミクロな視点で「できる・できない」を棚卸しします。教科書や問題集の目次を見ながら、単元ごとに自分の理解度を書き出していきましょう。
【例:数学ⅠAの場合】
- 数と式:式の展開、因数分解は問題ない。→ ◎
- 二次関数:平方完成はできるが、最大・最小の応用問題(軸が動くなど)で間違える。→ △
- 図形と計量:正弦・余弦定理の公式は覚えているが、どの場面でどちらを使うべきか判断に迷う。→ ✕
- データの分析:用語(分散、標準偏差など)の意味が曖昧で、公式を使いこなせない。→ ✕
- 場合の数と確率:PとCの使い分けが時々あやふやになる。反復試行が苦手。→ △
このように、「数学が苦手」という漠然とした認識が、「三角比の応用と、確率が特に弱い」という、具体的な課題に変わります。
ステップ③:志望校の「赤本」でゴール地点の”標高”を測る
最後に、あなたの志望校の過去問(赤本など)を、まずは1年分、じっくり眺めてみてください。まだ解けなくて全く構いません。目的は、「ゴール地点で要求されているレベル」を肌で感じることです。
「英語は、こんなに長い自由英作文が出るのか…」「数学は、証明問題の配点が大きいな」「社会は、教科書の隅に載っているような細かい知識が問われるのか」
ステップ②で明らかになった「現在のあなたのレベル」と、この「ゴール地点の要求レベル」との間に、どれだけ大きなギャップがあるのか。それを認識することが、この夏の学習の、本当の意味でのスタートラインです。
最終的に登るべき山(実際の問題)になるべく早く触れることを強くお勧めします。
「課題の明確化」こそが、やるべきことをクリアにする
どうでしょうか。ここまでの作業を進めることで、「夏休み、なんとなく頑張る」という漠然とした目標が、
「夏休みが終わるまでに、数学の三角比と確率を基礎問題集で完璧にし、英単語帳の残り半分を覚え、日本史の近代史を終わらせなければ、到底間に合わない!」
という、具体的で、自分事としての切実な「タスクリスト」に変わってきたはずです。そうです、これこそが計画を立てる上での、強力な原動力となるのです。
今日のワークは、少しだけ自分の弱さと向き合う、苦しい作業だったかもしれません。しかし、これほど重要なステップはありません。そうして完成したあなたの「課題リスト」こそが、これからの夏休みを照らす、信頼できる「地図」になります。
さて、地図は手に入りました。しかし、その地図に描かれた目的地すべてに到達することは不可能です。明日は、その膨大な課題の中から、夏に本当に集中すべき「最優先事項」を見つけ出すための、戦略立案の方法についてお話しします。