選挙制度の仕組みについて
更新日 : 2025年7月21日

盛り上がりを見せた昨日の参院選ですが、千葉選挙区では、国民民主、立憲民主、自民の当選が決まりました。本日は、公民、政治経済でも必要な日本の選挙制度の仕組みについて、わかりやすく解説します。
🔷 日本の選挙制度の基本
1. 選挙の種類
日本には主に次のような選挙があります。
選挙名 | 主な対象 | 任期 |
---|---|---|
衆議院議員総選挙 | 国会の下院(衆議院) | 4年(ただし解散あり) |
参議院議員通常選挙 | 国会の上院(参議院) | 6年(3年ごとに半数改選) |
地方議会選挙 | 都道府県・市町村の議会 | 4年 |
首長選挙 | 知事、市長、町長、村長など | 4年 |
🔷 国政選挙の仕組み
2. 衆議院の選挙制度(小選挙区比例代表並立制)
- 小選挙区(289議席)
- 全国を289の選挙区に分け、各区1人を選出
- 一番得票が多い候補が当選(=多数代表制)
- 比例代表(176議席)
- 全国を11ブロックに分け、政党に投票
- 各政党の得票数に応じて議席配分(=比例代表制)
🗳 有権者は「2票」投票する:
- 候補者名(小選挙区)
- 政党名(比例代表)
3. 参議院の選挙制度(選挙区+比例代表制)
- 選挙区(74議席)
- 都道府県ごとに定められた数の議席を、候補者名で投票
- 中選挙区制や大選挙区制の形式で行われる
- 比例代表(50議席)
- 全国単位で政党と個人名のどちらでも投票可能(非拘束名簿式)
- 得票数に応じて議席を配分
🗳 有権者は「2票」投票する:
- 候補者名(選挙区)
- 政党名または候補者名(比例)
🔷 年齢と選挙権
- 選挙権:満18歳以上の日本国民
- 被選挙権:
- 衆議院議員 → 満25歳以上
- 参議院議員 → 満30歳以上
- 首長 → 満25歳以上
🔷 特徴と課題
特徴 | 説明 |
---|---|
小選挙区 | 政権交代が起きやすいが、死票が多い |
比例代表 | 少数政党も議席を得やすいが、政党が強くなりがち |
非拘束名簿式 | 候補者の個人名でも投票可能(知名度が重要) |
🔍 深堀ポイント一覧
- 小選挙区比例代表並立制のねらい
- 比例代表:拘束名簿式 vs 非拘束名簿式
- 一票の格差とは?
- 死票とは何か?なぜ問題か?
- 全国比例とブロック比例の違い
- 選挙制度のメリット・デメリット
- なぜ参議院と衆議院で制度が違うのか?
① 小選挙区比例代表並立制のねらい(衆議院)
小選挙区制は「候補者個人に投票」、比例代表制は「政党に投票」します。日本の衆議院選挙ではこの2つを「並立」させて、個人と政党のバランスをとることを目的にしています。
制度 | メリット | デメリット |
---|---|---|
小選挙区 | 政権交代が起きやすい / 選挙が分かりやすい | 死票が多い / 小政党に不利 |
比例代表 | 民意をより正確に反映 / 少数意見が通る | 政治が安定しにくい / 候補者との距離が遠い |
② 拘束名簿式と非拘束名簿式(比例代表)
名称 | 仕組み | 採用例 |
---|---|---|
拘束名簿式 | 政党が順位を決める(上から当選) | 衆議院の比例代表 |
非拘束名簿式 | 有権者が個人名で投票 → 得票順に当選 | 参議院の比例代表 |
🔸非拘束名簿式では「芸能人候補」や「知名度が高い人」が有利になりやすく、人気投票化するという指摘もあります。
③ 一票の格差とは?
選挙区ごとに有権者の数が違うことで、1票の重みが不平等になることを指します。
例えば:
- A県:有権者10万人で1人当選 → 1人=10万票の代表
- B県:有権者30万人で1人当選 → 1人=30万票の代表
→ A県の1票はB県の1票の3倍の価値を持つ=違憲状態とされることも
憲法の「法の下の平等」に反するとして、これまで何度も裁判が起きています。
④ 死票とは何か?
死票とは、落選した候補者に投じられた票のこと。小選挙区制では「1位以外は全員落選」なので、実に多くの票が無効になってしまいます。
例:
- 候補A:10万票
- 候補B:9.8万票 → 落選
→ Bに投じた9.8万票が“死票”
📉 有権者の民意が議席に反映されにくいという問題が起こります。
⑤ 全国比例 vs ブロック比例
名称 | 地域 | 採用先 |
---|---|---|
全国比例 | 全国が1つの選挙区 | 参議院 |
ブロック比例 | 地域ごとに分割(11ブロック) | 衆議院 |
全国比例のメリットは全国的な知名度の候補が有利、一方で地域代表性が薄れる側面があります。
⑥ 選挙制度のメリット・デメリット(まとめ)
視点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
政治の安定 | 小選挙区で政権交代が起きやすく、民意を反映しやすい | 少数意見が埋もれるリスク |
民意の反映 | 比例代表で少数政党にもチャンス | 政治が分裂しやすく、連立頼みになることも |
有権者の理解 | 投票がシンプル | 二重投票制により複雑と感じる人もいる |
⑦ なぜ衆議院と参議院で制度が違うの?
- 衆議院:政権を担う機関 → 機動性・多数派重視(小選挙区重視)
- 参議院:再考の府・抑制機能 → 多様性や少数意見を重視(比例や中選挙区)
衆参で役割が違うため、あえて制度も異なるのです。