数学 軌跡の考え方
更新日 : 2024年11月26日
数学 軌跡の考え方
こんにちは!大津石山校オーナーの中川です。
今回は数学オリンピックにも出場した京大理学部数学科の板橋コーチに 「数学 軌跡の考え方」を紹介してもらいます。よかったら読んでくださいね!
【数学解説】軌跡の考え方
はじめに
今回の記事では軌跡の考え方を掘り下げていきたいと思います。早速ですが例題をあげます。
例題 1. 実数t
が0 ≦ t ≦ 1
を動くとき,次を満たす(x, y)
が描く曲線を求めよ:
簡単な問題ですが,解答としては t = x + 1
より t
を消去して
放物線 y = (x + 1)2
の -1 ≦ x ≦ 0
の部分となります。
ですが,今回話題にしたいのは t
を消去して得られたものをそのまま答えとしてよいのか?ということです。
次の例題を見てみましょう。
例題 2. 実数s, t
がs2 + t2 ≦ 1
を満たしながら動くとき, 次を満たす(x, y)
が動く範囲を求めよ:{x = s + t y = st
この場合,単に文字消去だけでは不十分な場合があることがわかります。 例題 1 と例題 2 の違いを明確にすることが本記事のテーマとなります。
軌跡の考え方~存在条件に帰着させる~
具体的な4つの点が C
に含まれるかを考えましたが、一般の点 (a, b)
が C
に含まれるかを考えてみます。
a = t - 1
, b = t2
, 0 ≦ t ≦ 1
を満たす t
が存在する場合に
(a, b)
は C
に含まれます。このようにして、C
に含まれる点をすべて集めたものが求める曲線です。
つまり、以下の条件を調べることが本問題の本質となります:
(a, b)
が条件を満たす ⇔t = a + 1
,b = t2
,0 ≦ t ≦ 1
を満たす
この条件は次のように変形できます:
(a, b)
が条件を満たす ⇔b = (a + 1)2
,0 ≦ a + 1 ≦ 1
⇔b = (a + 1)2
,-1 ≦ a ≦ 0
この同値変形が成り立つ理由は次の通りです:
- 「
⇒
」は、t = a + 1
と表せる場合、t
を代入した式が当然成り立つからです。 - 「
⇐
」は、t = a + 1
と定めると条件を満たすt
が得られるからです。
このような変形は「代入の原理」と呼ばれ、存在条件を考える上で基本的な道具となります。
この原理によって、変数 t
を消去しても正しい答えを導ける根拠が得られるのです。
以上の変形によって、求める軌跡は次のようにまとめられます:
求める軌跡はy = (x + 1)2
,-1 ≦ x ≦ 0
例題 2 の検討
次に例題 2 を考えます。例題 2 で描かれる曲線を D
とし、次の条件で表します:
(x, y)
がD
に含まれる ⇔s2 + t2 ≦ 1
,x = s + t
,y = st
を満たす実数s, t
が存在する
初めの条件式 s2 + t2 ≦ 1
を用いて s, t
を消去したいですが、
ここで例題 1 との違いが現れます。
⇔x2 - 2y ≦ 1
,x = s + t
,y = st
を満たす実数s, t
が存在する
例題 1 では t
を明確な式で表せましたが、例題 2 では s
や t
が
(x, y)
の式として表せないため、存在条件を消去することができません。
二次方程式を用いた解法
この問題を解決するために二次方程式の理論を用います:
x = s + t
,y = st
を満たす ⇔k
についての方程式k2 - xk + y = 0
が実数解を持つ ⇔ 判別式Δ ≧ 0
これにより、求める範囲は次のようになります:
x2 - 4y ≦ 1
まとめ
変数の存在条件を見直すことで、初めに述べた問題点を解決することができました。 このアプローチは軌跡の問題を解く際に非常に有用です。